日本ボバース研究会 会長コラム


「IBITA報告」森之宮病院 木野本 誠

 

 2010年9月2日から9月4日までブラジルのフロリアノポリスで開催されました国際ボバースインストラクター会議について報告いたします。日本からの参加者は、新保・大槻・平木・日浦・林・弓岡・稲村・佐藤・保苅・小野・西村・前田・木野本(敬称略)の13名です。日本からの参加者は全体の約3分の1を占める大グループでその責任の大きさを感じました。3日間のうち最初の2日間は教育セッションでした。最終日はGeneral meetingは議長のジャニス・チャンピオン先生の進行で行われました。

1日目の午前中はブラジルのPT2人と医師2人による講演でした。PTの講演について1つを簡単に報告します。Stella Maris Michaelsen先生による「Task-oriented training with trunk restraint」ということで、課題指向性のトレーニングとそれに伴う体幹の代償運動の増加及び後ろ歩きの際の体幹の代償活動を評価した研究発表でした。結論としては、代償運動(体幹)を制限した治療は慢性期の上肢の効果的な治療アプローチになると示唆されたということです。これに対しては代償を制限するだけでなく、体幹を活動的にしていくことでより効率的に上肢の治療が進められるのではという助言もありました。私は、ブラジルのメンバーがとても緊張しながらも母国語でない英語で堂々と発表を行い、質問に対しても動じることなく返答していたことがとても印象に残りました。 午後はワークショップでした。発症3ヶ月以内の脳卒中後遺症患者の重篤な上肢を呈するケースに対しての臨床的な介入について4グループに分かれて討論しました。私は症例として取り上げられたケースに関して、本当に重篤であるか否かが不明確なのでこの討論は一般的な上肢の治療になってしまうのではないかと、直接プレゼンターのKim Brock先生に質問しました。それに対しては研究のリサーチ委員として、研究者や医師に対してどのように介入方法や治療効果を伝えるかという側面を話し合い、研究に活かしていくかを考えているため敢えてこのケースを選んだとのことでした。IBITAではワークショップを通じて広い意見や考えを拾い上げ、研究に活かしていくシステムがあることを知りました。

 2日目は、日本のセラピストにもおなじみの「モーターコントロール」の著者のAnne Shumway-Cook先生と Marjorie Hines Woollacott先生の講義が1日行われました。 講義の目的は「脳卒中患者の機能的自立を妨げ転倒を引き起こすバランス機能障害の評価と治療の新しい概念を討議すること」でした。両女史はバランスを3つの側面、「運動」「感覚」「認知」に分けて説明して頂きました。 「運動」においては、バランスをSteady State Balance、 Reactive BalanceとProactive Balanceの3つのコントロールのタイプに分け、それぞれのバランスコントロールがどのようなものか、またそれらをどのように測定するかについて細かい説明を頂きました。「感覚」においては、視覚、前庭覚、体性感覚、固有受容感覚がどのようにバランスコントロールに関与しているか説明いただき、加えて感覚トレーニングによるセラピー効果についても実験的に説明されました。「認知」では、Dual Taskによるバランスへの影響や、加齢による注意力(認知)低下が引き起こすバランスの問題について説明されました。いずれにおいても、豊富な実験データに裏打ちされた両女史の情熱的なプレゼンテーションは圧巻でした。参考に講義で使われた4つのスライド(左)を提示します。



 また講義後半に出席者が「運動」「感覚」「認知」のコンポーネントを計測する評価練習を3〜4名のグループで行いました。全体で約10項目を評価した後、ケーススタディとして患者の評価データを分析して問題点と治療プログラムを立案することを試みました。評価で得られた点数から治療を考えるというプロセスにかなり戸惑いを感じたというのが私の正直な感想です。

3日目のAGMでは、まず小野先生・保苅先生・小室先生と私が、基礎講習会インストラクターとして、また淵先生・伊藤先生が上級講習会インストラクターとして正式に認定を受けました。2009年度には10名の新しいインストラクターが認定されました。認定書の授与に関しては非常に身の引きしまる思いと、今までご指導いただいた方々への感謝の気持ちがこみ上げてきました。また我々日本グループにとってもっとも感慨深い出来事として、アジアを中心に広域でボバース概念の普及に努めたことへの功績を認められ紀伊克昌先生と古澤正道先生がIBITA名誉会員に推薦・承認されました。日本グループとメアリーリンチ先生がスタンディングオベーションで拍手を送りました。またノミネート委員に大槻利夫先生が立候補し、承認を受けました。 今回のAGMにあげられた議題はすべて可決される形をとりましたが、投票権のある出席者が全正会員の25%に満たなかったことから、すべての議案が次回のAGM(オーストリア・ウィーン)で改めて確認しなければならないと言うことです。



 また、IBITAにおけるシニアインストラクターの役割が変わることによって生じるインストラクターの認定制度についてメアリーリンチ先生より意見を求められ、すべての出席者が必要と思われる認定過程や条件3項目をメモ書きして提出しました。このことは近く具体的に認定制度そのものが変わっていくことを意味しており、大きな変革に我々も対応しなければならないと感じました。

 最後に、始めてIBITA会議に出席させて頂いて感じたことは、この変革の時期にメンバーとして関わることの重責です。日本グループもこの変革に対して貢献できるように、また意見を伝えていけるような存在でありたいと思いました。私は未熟で微力ですが、今後少しでも関わりを深めていけるように努めていきたいと思います。



スライド:Anne Shumway-Cook女史、Marjorie Hines Woollacott女史によるIBITA2010教育セッション講義資料より引用 


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