日本ボバース研究会 会長コラム


会長コラム10月

「世界的な変遷の前兆」

 

日本ボバース研究会 会長   伊藤 克浩
 

平成21年10月8日

 オランダIBITA紀行にも書いたが先月行われたIBITAAGM(国際ボバース講 師協会定期総会)において、オランダが独自に行う240時間(ホームスタディ含)の 講習会「神経リハビリテーション/脳卒中」をIBITA認定基礎講習会として認めて欲 しいという動議がオランダグループによって提出されたが反対多数(88/140 名)で否決された。

 オランダグループの主張はクワッケル博士等の論文を元にしてい る。それは脳卒中リハビリテーションにおいて脳の可塑性に働きかけるアプローチは 発病3日目から8週間まで効果があり、それ以降は(6週目より並行的にスタート) 具体的動作を代償を許してでも行う課題指向型アプローチに切り替えるべきであると いう理論を背景にしている。
 またCIMTや電気適刺激を積極的に取り入れるという内容も含まれている講習会で ある。

 私の印象ではEBMに基づいて大学やリハドクターと提携すること、そしてトレッ ドミルやCIMT(麻痺側の強制使用)等ガイドラインでも普遍性とエビデンスレベ ルが高いとされているアプローチを併用することには他国のメンバーも反対していな いが、例外なく「発病8週以降は脳の可塑性に働きかけるアプローチをしても意味が ない」という主張には異論が多かったように感じた。
 日本でも8週目以降というと 「回復期リハビリテーション」という分類の時期になるが明らかに脳の可塑性に基づ いて回復していると思われる症例も多いし、例外的な重度症例をどうするかといった 議論も避けられないところである。

 この動議を採決する際に、スイスグループから第二動議が提出された。それは「ス イスでも今大学と提携していろいろな取り組みをしている。2年間様子を見てオラン ダの動議を採決してはどうか?」という内容であったがそれも否決された。
 EC圏の これらの動きはまず、民間保険会社がIBITA認定基礎講習会修了者の診療報酬を高く 設定していることに由来する。「個々の対象者に合わせて行うセラピストの技量や知 識に左右されるが高い治療効果」より、「結果がさほど良くなくても誰がやっても同 じ効果が得られる普遍的効果」が優先される。
 経済効果はもちろん考えられるべきだ が「国や保険会社のお金の都合で持っている潜在能力を切り捨てて良いのか?」今 後、日本でも突きつけられる課題である。

 「個々の対象者に合わせて行うセラピスト の技量や知識に左右されるが高い治療効果を目指すアプローチ」を望ましいとするの であればその「高い治療効果」を証明しなければならない。ボバースセラピストのみ ならず療法士に課せられた現在の最優先課題である。
 だが経験のあるセラピストは 知っている。ボバースに限らずクリニカルリーズニング能力の高い経験者は確実に新 採用者よりもより良い結果を出すことを。  


Prof. Gert Kwakkel
1 Chair Neurorehabilitation, Department of rehabilitation medicine, Rudolf Magnus Institute of NeuroScience, University Medical Centre, Utrecht and 2 department rehabilitation medicine, VU University Medical Center, Amsterdam, The Netherlands.

References:
1. Kwakkel G, Kollen BJ, van der Grond J, Prevo AJ. Probability of regaining dexterity in the flaccid upper limb: impact of severity of paresis and time since onset in acute stroke. Stroke. 2003 Sep;34(9): 2181-6.
2. Kollen B, Kwakkel G, Lindeman E. Longitudinal robustness of variables predicting independent gait following severe middle cerebral artery stroke: a prospective cohort study. Clin Rehabil. 2006 Mar;20(3):262-8.
3. Kollen B, Kwakkel G, Lindeman E. Time dependency of walking classification in stroke. Phys Ther. 2006 May;86(5):618-25.
4. Kwakkel G, Kollen B. Predicting improvement in the upper paretic limb after stroke: a longitudinal prospective study. Restor Neurol Neurosci. 2007;25(5-6):453-60.
5. Kwakkel G, Kollen B, Twisk J. Impact of time on improvement of outcome after stroke. Stroke. 2006 Sep;37(9):2348-53.
6. Kwakkel G. Impact of intensity of practice after stroke: issues for consideration. Disabil Rehabil. 2006 Jul 15-30;28(13-14):823-30.
7. Kwakkel G, Kollen B, Lindeman E. Understanding the pattern of functional recovery after stroke: facts and theories. Restor Neurol Neurosci. 2004;22(3-5):281-99.
8. Kwakkel G, Wagenaar RC. Effect of duration of upper- and lower-extremity rehabilitation sessions and walking speed on recovery of interlimb coordination in hemiplegic gait. Phys Ther. 2002 May;82(5): 432-48.
9. Kwakkel G, Meskers CG, van Wegen EE, Lankhorst GJ, Geurts AC, van Kuijk AA, Lindeman E, Visser-Meily A, de Vlugt E, Arendzen JH. Impact of early applied upper limb stimulation: the EXPLICIT-stroke programme design. BMC Neurol. 2008 Dec 17;8:49.
10. Kollen BJ, Lennon S, Lyons B, Wheatley-Smith L, Scheper M, Buurke JH, Halfens J, Geurts AC, Kwakkel G. The effectiveness of the Bobath concept in stroke rehabilitation: what is the evidence? Stroke. 2009 Apr;40(4):e89-97.


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