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Postural Muscle Dyscoordination in Children with Cerebral Palsy
Author:Jalanda C.van der Heide and Mijna Hadders-Algra
Journal:Neural Plasticity 2005(12)Page:197-203
要約:
脳性麻痺(以下CP)の姿勢の問題の根本となる、筋の協調不全について、現時点で分かっていることについて報告する。CPの治療的介入の成功に欠くことができない情報である。今までに、GMFCSレベルⅤの3人のCP児を調査した。児は全てのあるいは一部の姿勢調節のdirection specificityが欠如し、3秒以上一人で坐っていられない。何人かのGMFCSレベルⅣの児は、direction specificの調節は損なわれていなかったが、他のGMFCSレベルⅣの児は、direction specificの調節が困難であった。GMFCSレベルⅠ~Ⅲの児は、基本的な姿勢コントロールは損なわれていないが、task specificの調節である姿勢筋の収縮をちょうど良い状態にするのが困難であった。機能障害は、痙直型片麻痺より痙直型両麻痺でより顕著であった。筋収縮の程度の調節の問題は、CPの典型的な発達である難しいバランスを要求される課題では、拮抗筋の過剰な同時収縮や、例えば上肢のリーチの際、頭尾方向の補強を好むことにあるかもしれない。これは、繊細な姿勢調節の調整能力の困難さを代償するための機能的な戦略としての固定とも考えられる。
序論:
姿勢調節の神経制御は、1)体幹の平衡機能が乱れた際にdirection specificの調節が機能する。2)種々の感覚情報よりdirection specificの調節をちょうど良くする、に区別される。
姿勢制御の典型的な発達:
CPの姿勢協調不全:ほとんどのCPは姿勢コントロールの基本的なレベルは障害されていない。
坐位でリーチしているときの姿勢調節:Hadders-Algraら(1999)やVan der Heideら(2004)はCPの自発的なリーチ動作時の姿勢調節は、2歳以前からen blocパターンの欠如により影響を受ける。重度CPの姿勢活動のパターンの異常さは、彼らの頸および体幹筋の緊張と一致する。
また、リーチできるCPでもタイミングの良い姿勢コントロールは難しい。姿勢保持に対しては過剰な拮抗筋の同時収縮は見られないが、バランスを要求される場面になると姿勢筋の拮抗筋の同時収縮が見られる。機能的な適応とみなせる。
姿勢調節のtop-down組織化は姿勢コントロールの主なゴールである空間での頭の安定性に影響している。
総論:
GMFCSレベルⅤの児では、基本的な姿勢コントロールは全てあるいは部分的に障害されている。これらの児のマネージメントとしては、姿勢のマイルストンを達成させるのではなく、姿勢保持のサポートを十分に与えることが必要である。GMFCSレベルⅣでは、基本的な姿勢コントロールは全部あるいは部分的に障害されていない。そして全てのGMFCSレベルⅠ~Ⅲの児は、direction specificな姿勢調節を有している。
CP児は特に、task specific調節のための姿勢筋の収縮の程度をちょうど良くすることが難しい。機能障害は、痙直型片麻痺より痙直型両麻痺で顕著である。筋収縮の程度の調整の問題は、正常児に比べて難しいバランスを要求されたときの拮抗筋の過剰な同時収縮や、リーチの際の頭鼻方向の補強を好むことが理由かもしれない。この状態は、姿勢の調整能力の機能不全による代償的戦略として考えられる。軽度および中等度のCPでは、同時収縮の減弱やtop-down補強の縮小に焦点を当てるのではなく、むしろ姿勢コントロールの程度を変えるバランス練習をした方が良い。