会長挨拶
一般社団法人 日本ボバース研究会
会長 日浦 伸祐
2020年は、紀伊克昌氏によってボバース概念が日本に導入されて、50年となる節目の年となります。
私自身、1986年に理学療法士となりましたが、そのきっかけとなったのが、大学時代の専攻科目(心理・自閉症)とは違う、脳性麻痺を対象としたセミナーでした。指導教授の指導の下、大学院生、学部生がボバース概念よる子どもたちへの介入を行うというもので、眼前の子どもたちがみるみる変わっていくのが学部生の自分でも感じることができました。
そして、卒業と同時にPTの養成校に入学していました。
カレル・ボバース氏がおっしゃった、
“患者様を宝物のように扱いなさい。誠心誠意をもって”
“リハビリテーションのできない患者様は、いらっしゃいませんし、患者様とその家族に対し、リハビリテーションのできない言い訳も許されません。治療の責任は、すべて私たち医療者の側にありますから”
ボバース概念が治療法ではなく、問題解決アプローチであり、セラピストの絶え間ない努力による臨床推論能力の向上により、利用者さんを支援します。
クライエント/ファミリー・センター・アプローチの概念を持って、利用者さんに24時間、そして、ライフステージを通して寄り添っていきます。
今、時流の中でハンズ・オンのセラピーの肩身が狭くなってきています。我々は論文化されている直接的な治療法(Evidence Based Therapy)を行うだけではなく、有用なエビデンスを知り、それの情報を活用したセラピー(Evidence Informed Therapy; Block K(2018))を利用者さんへの個々へのセラピーで展開することができます。
利用者さんへのハンズ・オン介入で得らえるバーバル/ノンバーバルなコミュニケーションを通して、臨床に重要なヒント(critical cues)が得られます。そして、臨床だけにとどまらず、サイエンスの実証の為の研究デザインにつながる多くのヒントもそこには埋もれています。サイエンスと臨床はシームレスの関係があり、また、相互に作用しあうものです。
学術大会での発表や論文投稿で“ボバース概念による”という言葉を用いるかどうかの討議は別の機に譲るとしても、皆さんの行っている臨床や研究活動で、“ボバース概念に基づいた”介入を行っていくことは、科学的情報に基づいた、根拠のある介入であることは自負してもらっても良いかと考えます。
会長の任につき、今、会員の方々がこれからも、そして、新たに興味を持っていただける方へも、ボバース概念に魅力を感じて一緒に未来に向かっていけるように尽力していきたいと考えています。