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Estimating Minimal Clinically Important Differences(MCID) of Upper-Extremity Measures Early After Stroke
訳者:順天堂東京江東高齢者医療センター (沖 真由香)
脳卒中急性期における上肢の検査方法の「臨床的に意味のあるミニマルな症状変化(MCID)」を考える
Lang CE、Edwards DF、Birkenmeier RL Dromerick AWArch Phys Med Rehabil 2008;89:1693-700
目的:
脳卒中急性期でのいくつかの上肢の検査方法の「臨床的に意味のあるミニマルな症状変化(MCID)」を測定すること。
*MCIDの定義:患者がある分野の中で副作用が無く低費用で、有益であると感じ、その変化を自己管理できる最小の変化
研究デザイン:
この論文でのデータは、「脳卒中急性期でCI療法を施行するトライアル」からランダム化された単一盲検で集められた。対象者にはベースラインとなる初期評価を平均9.5病日で行い、治療後の最終評価を平均25.9病日で行った。それぞれの時点で対象者の麻痺側上肢を6つのテストバッテリーで評価し、最終評価時はそれに加えて、対象者は主観的に麻痺側上肢の変化を7段階(1非常に良くなった、2少し良くなった・意味があった、3少し良くなった・意味がなかった、4変化なし、5少し悪化した・意味がなかった、6少し悪化した・意味があった、7非常に悪くなった)で評価した。全ての6つのテストで麻痺側利き手と麻痺側非利き手は別々にアンカーベース(変化率を図る方法)で分析しMCIDを求めた。
設定:
リハビリ病院の入院患者
対象:
脳卒中による片麻痺を持つ52人
評価方法:
テストバッテリーは、機能障害レベルの評価として①握力と②複合的な上肢の筋力、活動レベルの評価として③Action Research Arm test(ARAT)(巧緻性の評価)と④Wolf Motor Function Test(WMFT)上肢運動機能評価法、参加レベルの評価として⑤Motor Activity Log(MAL)と⑥加速度計を使用した上肢の持続使用時間を使用した。
なお、今回は主観的評価の7段階の中で1と2を意味のある値とし、それぞれのテストバッテリーの中でMCIDを求めた。
結果:
MCIDが求められたものは、握力(麻痺側利き手5.0kg/麻痺側非利き手6.2Kg、以下同様に記載)、ARAT(12点/17点)、WMFT(1.0点/1.2点)、MALの運動の質のスコア(1.0点/1.1点)であった。
麻痺側利き手の複合的な上肢の筋力と、麻痺側非利き手のWMFTのスコア、麻痺側利き手・非利き手両側の上肢の持続使用時間については、MCIDは求められなかった。
考察:
これらのデータは脳卒中急性期での上肢の標準的な評価に臨床的に価値がある第一歩となるだろう。これらの値の精度を改善するには、脳卒中後の経過によってMCIDの価値が変化するのかなど、より多くのサンプルとさらなる研究が必要である。