上級講習会報告「身体のPostural control and balance control」実技編
上級講習会報告(2)実技編
成人片麻痺上級講習会報告 2009年5月
講師:紀伊克昌・大槻利夫・新保松雄
会場:天草病院
報告者:リハビリテーション天草病院 江連亜弥/東京都社会保険医療公社大久保病院 児玉直子
文責:大槻利夫
実技①大槻先生(下肢と骨盤 背臥位)
下肢
- 全身のアライメント、局所(筋)のアライメントを読む。「膝を胸に近づけるように」と指示。中間位、矢状面上で出来るとよい。きちんと中枢が働いていれば、末梢は緩んでいる。片麻痺者は足関節背屈が強く股関節で引き込む。
- 良い方の下肢のパテラの上(quad)に手を置き、軽く転がし、過活動を見る。
- (LOW TONEの場合)大腿骨頭が股関節周囲の低緊張で重力により下後方へ落ち込む。
- パテラを持って中間位へ持ってくる。
- 腓骨を持ってガストロを転がす。
- 足部はアーチに手を入れて、どのくらい底屈できるか見る。
- 外反・背屈で膝を緩めて屈曲へ。
- 足底を付く。
- 距骨を入れ込んで踵に荷重かけて背屈。三角靭帯のところを開いて底屈する。
- ガストロの筋腹もって屈曲へ、足趾背屈しておろす。外反でガストロモールドしてplacing。
- 膝伸ばすとき、底屈に入らないように、自分の内股を押してもらいながら。膝屈曲位のときにquadを持ち上げて前に出し、ガストロを膝窩に入れ込みながら伸展する。
股関節
- ガストロの下から手を入れ、両人差し指は内外側のハムストリングスを触診。てこを使いながら上、末梢方向へ膝を緩める。
- 片膝立ちにして、quadから踵に圧。ハムストの近位部を入れ込んで収縮高める。
- 反対の下肢を上に組んだり、戻したりする。
- 両側、脛骨粗面から大腿骨頭をベースにして骨盤前傾しないように両側一緒に屈曲する。
- おろしたら、胸郭を安定させて、反対側へ両下肢を倒す。
- 硬かったら、一度骨盤と胸郭を近づけて、離す。コアを働かす。
実技②紀伊先生 (座位・立位)
はじめにキブラーテストでふらつく側を決める。(ふらつく方を仮に麻痺側とした)
- 座位で、非麻痺側下肢を軽く持ち上げて重さをチェックする。ベースが反対側に移るかもみる。
- 橋網様体にスイッチを入れる。(同側性)
- 背面だけでなく、前面にも筋活動が起こるところで上肢を動かしていく。
- 動かしている側の坐骨の上で行なう。
- 途中でポーズをとり、ためを作って、さらに伸ばしていく。
- 体幹も伸展活動。
これで体幹準備できたら、両手はベッドにon hand。
- 療法士は麻痺側足部が短縮していないか確認する。
- アーチからガイドする。
- 踵を上げる(この時股関節周囲は働きかけコアにスイッチ)。
- 踵を下ろすときにトーンを抜かない。
- 前足部のスタビリティを求めて、前足部のベースの面積を最小にしていきながら下肢をplace。反対の手で骨盤の後傾を少しおさえる。
- 自分の太ももに足底をフィットさせる。内側外側に動かし、反対の手で中殿筋、筋膜張筋を触診。
- そこから底屈さらに入れ、長い足を作る。
- 股関節を屈曲。戻してさらに屈曲。でも骨盤は後傾しないようにする。
- そこから膝の伸展。
- 下肢下ろすときに骨盤少し前傾させ、踵を下ろして立ち上がりにつなげる。
立位
- 立位で肩関節90度まで挙げ、回外位で壁に手を付く。
- 腹部(グラビセプター)をmold
- 内側ハムストたどって、ハムストの近位部を中に入れ込み、大殿筋を上から下方向にし、一緒にする。(坐骨でうけるけど、持ち上げない)
- ハンドリングしている側に体重移動誘導し、反対側はフリーにする。
- 正中に戻し、前面と後面のハンドリングしている手を近づけて、前上方へそのまま挙げて、つま先立ちへ。だんだんハンドリングの量を減らす。
- 壁から手を離し、上肢挙上位で肘からハンドリングし、つま先歩きへ。
- 立位で片上肢だけ壁に手を付き、非麻痺側下肢を一歩前に出す。
- ガストロの外側にスタビリティを与えて、もう片方の手で遠位部を保持しながら踵を挙げる。このとき筋腹をローテーション。安定させている手の母指で内側方向へ入れ込み、近位部へ送ると膝が緩む。内側のガストロは中間へアライメントを戻す。
- 外果に母指、踵の内側に残りの4指をおき、しっかりグリップすると踵が浮く。前足部へ送り、軽くなったら浮かせてswingしてから接踵へ。さらに後へ戻して、つま先をつく。だんだん早くして、援助の量も減らし、脊髄レベルで行なってもらうように。
実技③大槻先生
(座位での体幹と肩甲骨の分離)
麻痺側の広背筋、上腕三頭筋の短頭は不活動。非麻痺側腰背部と股関節は頑張らなくてはいけない状態。
- 療法士は片方の手で臀部をmoldし、もう片方の手で、肩を持ち上げない程度に、腋窩の下に手を入れて上肢の重さの中身を確認。(低緊張なのか?下方に引かれているのか?)
- 上腕二頭筋をもち、上腕骨頭を関節窩に保持するように待つ。
- 体幹はどんな風に反応?患者の腹内側系が探索してくれるのを手から感じながら待つ。Mid lineはどのように意識しているか?
- 体幹の伸展を誘導。リニアエクステンション。仙骨から誘導かCKPから誘導か。脊柱は左右の坐骨の間という情報を送る。
- 非麻痺側の肩甲骨の上に手をおき、「分かる?」次に麻痺側肩甲骨。Mid lineがぶれないように、皮膚の柔軟性から出していき、次に深いところを動かす。麻痺側の坐骨上に肩甲骨をセットする。
- 上腕二頭筋を骨頭に納めて、開きながら肩甲骨を下制。
- 上腕二頭筋と上腕三頭筋に持つ手を変えて、三頭筋安定で、二頭筋を上方へ入れてから、開く。
- 大胸筋の壁をグラスプ。一度胸骨へ戻して、そこから、開いて坐骨へのせる。緩まない人は胸の下から上に上げて外旋。
- 上腕三頭筋moldまたは三角筋mold。肩の上かCKPにstability。三角筋を上から持ち替えてキープし、ゆっくり上肢をベッドへ。手指は屈曲位でも手掌をついてもどっちでも良い。左右共にベッドにつく。
- 肘がロックしないように。上腕三頭筋持って、少しずつ外へ持っていく、下に引いたタオルをずらしても良い。療法士の前額部を肩において移動しても良い。
- 片手は仙骨から前に送り込み、もう片手は前胸部において伸展。または、CKPから下に送り込んで伸展。
- 両側の肩甲骨を近づける。胸椎伸展した位置で少し左右へ重心移動。
- 頚部の後、脂肪が溜まりやすい。下にゆっくり下ろす。
- 手掌からトーンを抜かないように、手を挙げて、肘を緩めて体側へつける。肘は屈曲するけど、従重力方向へplacing。外転しないように。
- ついてきたら、方向かえる。挙上したら回外背屈で緩めて下へ。
- 挙上したら反対の肩触ったり、頭の後に持っていったり、頭の後ろで指を組んで肘をたたんで、開く。
実技④新保先生
- 大胸筋から重さをとり少し外側へ。後ろの手は肩甲骨へ。
- 上腕三頭筋近位部に安定。腕橈骨筋をリアライメント。癒着していること多い。回内筋も外側へ。
- 肩甲骨の内側縁に安定。もう片方で肩甲骨少し上外側へ。その時に肘が伸展するように行なう。
- coreから体幹が伸展するのを感じる。伸展したら肩甲骨をセットする。
- 上腕三頭筋を上にすくう。リストを橈背屈して肘を後方へselectiveに屈曲。屈曲でも上腕三頭筋は大切。テーブルへ持っていくときに、肘を遠心性に緩める。
- 腕橈骨筋に安定を与える。リストを引き出して出ている手根骨を入れ込みながら背屈する。
- 手根部と肘頭からつなげて、前腕のBodyスキーマをはっきりさせる。
- 手掌内に手をあてて安定させ、手指を長く。MPjtの先をディストラクションする。
- 手指を安定させて、手掌を広げる。
先に骨間筋を末梢側から近位へ。(骨間筋は姿勢制御)次に屈筋群を行なう。
- 母指球と小指球の間から一度開いて、手背を伸ばすように手のひらを対立。そしてまた広げる。